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Side 倉田舞
先輩の顔が私の真上にある。近い。
そして、さっきまでの顔つきと全然違う。
「せん…ぱい…?」
「…………」
無言で私を見据える瞳は氷のように冷たい。
それを見て、胸がドクドクと音を立てて走り出し、激しく上下しだした。
目を逸らしたくても、逸らせない。
“そうさせない”というような殺気めいたものを感じる。
いきなり人が変わったように豹変し、私を組み敷くなんて、どうして……?
ただ私をじっと見ているだけの沈黙の空間に耐え切れず、口を開けば、
「あの…」
「…俺は、まだ忘れてない」
ほぼ同時に先輩も唇を動かして、
「…っ」
その言葉にはっとし、動悸が更に激しさを増した。
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