◇戻れない道◆

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教会からロビーに戻ると、私に気づいた笹田先輩が血相を変えて走り寄ってきた。 「もしかして、行ってしまったのかと思った」 「すみません、化粧室に行ってたんです」 「荷物、持つよ」 笹田先輩は私に理由も何も聞かずよくしてくれる。 「ありがとうございます」   こんな時、甘えさせてくれる存在というのは、とても気持ちが和らぐ。 ホテルを出て駐車場に着いた。 「先に乗ってて。荷物を後ろに積むから」 「はい」 助手席に乗りこんだ所でカバンからスマホを取り出し、ラインを開く。 『ごめん、家に帰るね』 短文を直美に送り、スマホの電源を切った。 こんなのを送れば見た瞬間、即行で電話がかかってくる。 だけど、いろいろと問いただされても順序良くしゃべれる自信はない。
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