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笹田先輩がドアを開け、運転席に乗り込んだ。
車のキーがまわり、エンジンがかかった。闇夜に駆動音が響く。
サイドブレーキが下り、車がゆっくりと動き出し、林の中を抜けていく。
私は車内から離れ行くホテルを遠目に眺めた。
桜木先輩、これで本当にお別れです。
これでもう、本当にご迷惑はおかけしません。
さよう、なら―――…
車が信号のない高原を抜け出し、明るい街並みが見えて来た。小さな町へ来たようだ。
「舞ちゃん、疲れてるでしょ? 眠ってていいよ。もう少ししたら高速に入るし」
笹田先輩は本当にいい人だ。
私みたいな、こんなつまらない女を気にかけてくれて、
「はい、ありがとうございます。でも大丈夫です」
さらっと優しい言葉を投げかけてくれる。
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