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「一体、どうしたの?」
重い唇をなんとかこじ開け、呟くように答える。
「…………家に、帰るんです」
「えぇ? どうして?」
「…………」
理由をうまく説明できるはずもなく、俯く。
「もしかして、僕のせいなのかな?」
「いえ、違います。そうじゃありません」
申し訳なさげに言われて、それはさすがに即座に否定した。
「じゃあ、どうして? 家で何かあったの?」
駄々っ子を諭すような優しい口調。
「……いえ、お気になさらないで下さい」
だけど、やはり理由は言えず、再び俯くと、笹田先輩が小さな吐息を漏らした。
「一体、どうやって帰るつもりなの?」
「それは……フロントで、タクシーを呼んでもらいます」
「ここから!?」
「……はい」
笹田先輩は次の言葉へ繋げず絶句している。
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