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今の時間に、しかも家までだなんて正気の沙汰じゃない。無謀にも程がある。
しばらくの沈黙の後、ふぅっと蝋燭(ロクソク)を吹き消すようなため息が聞こえた。
「……わかった、それじゃ一階のロビーで待ってて。すぐに荷造りしてくるから」
「…え?」
ゆるりと顔を上げれば笹田先輩は穏やかな笑みを出していて。
「乗りかかった船だから、僕が送るよ」
私は突拍子もない申し出に驚きつつも、
「ありがとうございます。お願いします」
とにかく早くこの場から去りたい一心で、即行で合意の返事をした。
普段の自分ならこんな行動はあり得なかった。
でも、今は違った。
ここから今すぐに連れ出してくれるのなら、笹田先輩でなくとも他の誰にでもついて行っただろう。
私は笹田先輩と別れ、1階へと歩を進めた。
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