第3章 来たれ体育祭

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「さあ、行こうか真廣くん。君に紹介しなくては行けない人がいるんだ」 会長が差し出してくれた手を借りて立ち上がった自分は、トラックの回りを走る生徒達など気にも留めないその背中を追いかけていきました。うーん、なんだかんだで本心が掴めそうも無い人ですね。 「そういえばまだ君のリレーの担当競技を話してなかったね。君は今から紹介する人と一緒に第3走者として二人三脚を走ってもらうよ」 校庭の端に生えた大きな木々達が作る木陰の下まで来た時、会長がそう言ってきました。 二人三脚ですか……初めてやる競技だからちょっと楽しみですな。 校庭の端からのんびりと眺める皆の練習風景に毒されて、自分は柄にもなくちょっとワクワクしてきてしまいました。 「あらあら、こんな木陰で代表生徒ともあろう方が堂々とおサボりですか? 良いですね、そんな悠長にしてられて」 自分が初夏の風の匂いを青空の下で堪能していると、そんな風を嵐のように吹き飛ばすが如く、めんどくさい方に突然絡まれてしまいました。 「…………なんのようですか、ナルシストさん?」 「ナルシストじゃありません!! 綺菜麗奈っていうちゃんとした名前があるんです!! それに私が可愛いのは事実ですから!」 もう本当なにしに来たんですか……? 「なによその邪魔臭そうな顔は。私が来たんだからもっと、ほら、あれよ、なんかもうちょっと敵対心みたいなの見せなさいよ」 いやいや、そんなこと言われても元々こっちサイドは勝負に対して前向きじゃないですから。 「やあ、綺菜くん。今日も良い天気だね。そっちチームの練習のほうは順調かい?」 会長が助け船を出してくれました。生まれて初めて会長に毛先ほど感謝しました。 「ああ、居たんですね会長」 「大丈夫、僕の扱いなんていつもこんなもんさ」 会長が小さく耳元で呟いてきました。 「心配せずともこっちは万全ですから! それはもう最強の二年有志チームが出来上がりましたので」 「ほう、それは楽しみだね。綺菜さんがリーダーみたいだけど、そのままアンカーも走るのかい?」 「あら、そんな軽い誘導でこちらの情報を明かすようなアホだと思われていたなんて、ちょっとショックですね」 お互い見つめあったまま、仮面のような笑顔は崩しません。なんで体育祭で高度な心理戦なんてしてんすかねこのお二方。
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