第3章 来たれ体育祭

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「まあ、とりあえず今は敗北必至の勝負に対して無駄な努力をする山田くんの顔を拝みに来ただけですから」 嫌み成分100%で構成された日本語を放ってきました。じゃあこっちもちょっとお返ししちゃいますかね。 「自分の顔をわざわざ見に来てくれたなんてちょっと恥ずかしいですね。てへぺろ」 「な、なにいってるのよ!? そういう意味じゃなくて、だから、えっと、ほら! あれよあれ! 嫌みよ!!」 …………おお? なんか意外にダメージ与えられたぞ? それより個人的に最後ちゃっかり嫌みとかはっきり言われたところが気になるんですが。 「と、とにかく、ちゃんと負ける準備をしてくれてるのならいいわ。ちゃんと負けた時の約束守りなさいよ!」 あー、なんでも言うこと聞くってやつですか。なんでそんなにそれにこだわってるんですかね。誰か大切な人の遺言だったとか? 「じゃあ、私はこれで」 彼女は踵を返してグラウンドの中央へと去っていきました。本当に嫌みだけ言いに来たんですか? 「ずいぶんとまあ暇な方ですね」 「……全く、君は本当に女の子泣かせだね」 「は?」 「彼女、絶対君とお話ししに来たんだと僕は思うんだけどなー」 ええ、そんなの百も承知ですが。だから俺にわざわざ嫌みを言いに来るなんて暇な人ですねって言ってんだよくそ野郎てへぺろりん。 ……語尾につけるだけでこんなに言葉の鋭さを和らげてくれるんですね。便利です。 「……ま、鈍感な君に与えられるヒントはこれ以上無いけどね」 そう意味深な言葉を会長は呟きました。 「そんなことより早く椎名さんを探さないと……」 そして会長は辺りを見回します。そうでした、二人三脚のペアを待っているんでした。どっかの人気一位の方のせいで危うく忘れるところでしたよ。ちょっと立って待ってるの面倒なんで端によって座ってますかね。 よっこらせ。 そんな掛け声を軽くこぼして、自分はポツンと地面に座り込みました。 「すみません会長、お待たせしました」
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