第3章 来たれ体育祭

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妖艶と言うには若干覇気が足りないような、可憐と言うにはちょっと大人びているような、そんな綺麗な声が聞こえました。思わず顔を上げた自分の視界には、一人の体育着姿のスタイル抜群な女子生徒が映りました。 「お! 待ちわびていたよ椎名さん! やっと来てくれたね」 「すみません、ちょっと……彼女達に絡まれてしまい……」 凛とした表情で会長と話す女性、椎名さんとやらは、申し訳なさそうに言葉を紡いでいきます。謝罪の意を込めて軽く下げた頭からは綺麗な黒髪が流れていて、個人的に『社長秘書をやらせたら一番ハマる人ランキング』で見事一位に躍り出ました。 「彼女達って……後ろの人達のことかい?」 「はい……」 「キャー! 椎名さんこっち向いてー!!」 「椎名さん握手してくださーい!!」 「椎名先輩綺麗ですー!! 憧れますー!!」 …………なんじゃありゃ?? 数十名の同じく体育着姿の女子達が椎名さんの真後ろに群がっています。各々が椎名さんに黄色い声援を送っていて、そうですね、言うなればファンクラブみたいなものでしょうか。 「うーん、相変わらず椎名さんは女子人気が高いなー。ま、それはさておき、山田くーん!ほらほら! 高校生ともあろう人がそんなおじいちゃんみたいに座ってないで! 早くこっちにおいでよ!」 そんな大きな声で言ったら目立つじゃないですか! もうちょっと、なんていうか普通に紹介してほしいのに。 よっこらせ。 自分は立ち上がり、軽い溜め息を吐きながらカオス空間へと歩いていきました。 「ほら、おいでおいで!」 「はいはい。今行ってますよー。あと五メートル我慢してください」 そんな訳で椎名さんの目の前に立たせて頂きました。対面で見ると、これまたとても美しい女性ですね。思わず見とれてしまいそうなほど美人です。 「はい、というわけでこちらが生徒会二年の椎名悠華(しいなゆか)さん。君が今回一緒に二人三脚をする相方さんだよ」 こんな綺麗な方と二人三脚出来るんですか。男として人生のピークですね。 「そしてこっちが前から僕が話していた噂の山田真廣くん。可愛い顔してたまに毒舌だから」 なんちゅう紹介してくれてんねん! 真面目そうな人とはじっくりと関係性を築きたいのに! もう会長のバカ! アホドジハゲデブ加齢臭! 宇宙界のぼっちこと冥王星で一人でひたすらその眼鏡磨いてろ!!
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