第3章 来たれ体育祭

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遠ざかっていく数十名の女子と会長の背中を見ながら、自分は早速疲れてしまいました。 「まあ私も山田についてはたまに耳にしていたが、確かに行事を不当な理由で休むのはあまり誉められたことではないな」 すぐ側に立つ椎名さんが凛と喋りだしました。予期していなかった上にどうやら怒られフラグが建っているみたいで、背筋がぴーんと伸びてしまいます。ててんてん天使の羽状態です。 「なんで休んでいたんだ? 男子は普通こういうものを楽しむものだろう?」 なんでって言われてもな……一応学校には居てちゃんと応援席から競技は見てたしな……。それに男子だから行事を楽しむとも一概に言えないですし。 自分がどう上手く言葉を繋いでいこうか考えていると、それより先にまた椎名さんが口を開きました。 「あ、す、すまない! 会ったばかりなのに変なことを聞いた」 「え? いえいえそんな! 全然大丈夫ですよ。単純に出たい競技が無かったような記憶があるんですけど……まあどっちにしろただ単にめんどくさかったからですし、椎名さんの言う通り、あんま誉められたことではないですね、あはは」 我ながら自分のカバーの不自然さにびっくらこきました。なんか変に椎名さんに勘違いさせていたら申し訳ないです。 「でもまあ、今年は代表生徒もありますし、ちゃんと一生懸命頑張る所存ですよ。これからよろしくお願いしますね、椎名さん!」 「お、おう! こちらこそよろしく、山田。あ、それはそうと君は運動は得意なのか? 二人三脚をやる以上、ペアの運動能力は把握しておきたいのだが」 「それなら大丈夫です。限りなく0に近いと思って頂いて差し支えないです! はい!」 もうこれ以上無い位の笑顔で言いはなってやりました。正直で居るって、キンモッチィィ!! 「…………は?」 「恥ずかしい話、自分ここ一年で運動はほとんどしてきてないです! よく駅のホームにある5段分ぐらいしかないちっちゃいエスカレーターでもちゃんと利用します! んはぁい!!」 「山田……」 「はい、なんでしょう?」 「まだ本番まで時間はある」 「はい」 「本番までにとりあえず合計百キロは走ろう」 「はい………………え?」 「百キロだ。拒否権は無い」 「ぬわわわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?」
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