第3章 来たれ体育祭

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「え、ひゃ、百キロ!? 百キロってあの、二十四時間テレビとかでよく有名人が夜通し走ってるあの百キロですか!?」 「そうだ! あの百キロだ! 毎日数十キロ走れば全然間に合うあの百キロだ!学校の裏にある山を何往復か登り降りしていれば到達するあの百キロだ!」 「拒否しま」 「拒否権は無い!」 「なんて日だ! なんて日なんだ! というかなんなんですか! 毎度毎度なんでこの学校には拒否権が無いんですか!! 一体全体なんなんですか!」 「それはこっちの台詞だ! なんだ5段分ぐらいのエスカレーターでも使うとは! あんななんでわざわざ設置されたのかも分からぬ物まで使っているとはどういうことなのだ! どうして階段を使わないんだ!」 「子供心があるからぁ!! 楽をしたいだけじゃなくてああいう珍しいものはついつい利用したくなっちゃうからぁ!! 男ってそういうものだからぁ!」 「こ、子供心だと……!? え、ええいダメだダメだ。君の精神も鍛えなくてはダメだ! もう今からだ! 今から早速あの裏山を登ってくるんだ!! さあ! 今すぐに! 今すぐにあの山を登るんだ!!!」 「とりあえず一回落ち着きません?」 「すごいな君」 ふぅ、疲れた。 会長以来ですよ、何言ってんだろうこの人って思ったの。まあ自分も大概ですけどね。 「……フフッ、なかなか可笑しな人だな君は。私がこんな大声で話したのは君が初めてだ」 突然椎名さんが笑いました。その顔はやはり気品があって美しいものです。 「自分もですよ。そもそも女の子と二人きりで話す機会なんてそうそう無いですし」 「おや、そうなのか? そうは見えないが……まあ人は見かけによらないということだな」 どういうことでしょう? 実際自分が最後に女子と二人きりで話したのは多分だいぶ前……… ……あ、あのナルシストさんを忘れてました。 「それはさておき、とにかく百キロは走ってもらうぞ」 「マジですか? でも今日は一応他の生徒会の方々との顔合わせも予定してるって会長が言ってましたよ」 「それなら大丈夫だ。山田なら裏山に行ったと私が伝えておく」 「なんですかその桃太郎のお爺さんみたいな言い方は」 し、椎名さんもどんな人なのか掴みづらい人ですね……もしかして生徒会ってこんな人達の集まりなんですか……? 自分だけは平凡に居ようと決心するこの頃です。
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