第3章 来たれ体育祭

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「そっか。まあ二人の練習だから、とりあえず二人に任せるよ」 自分が、そもそもどうして体育祭の練習で百キロ走らねばならぬのかについての思考をびろんびろん広げていると、自由至上主義の会長がそんな発言をしました。 てか、他の生徒会のメンバーさんは? 「あの、個人的に他の生徒会の方々とも早めに顔合わせをしたいんですけど」 とりあえずその中に常識的な人がいて、椎名さんの異常な練習メニューを止めてくれることを祈ります。 「うーん、あと僕たちの他にリレーに出るのは二人居るんだけど、片方はちょっと見当たらなくて、もう片方に関してはもはや見当たらないんだ」 絶対突っ込んであげないんだから//// 「じゃあ僕はまた他の仕事に行かなくちゃいけないから」 そう言ってまた会長は熱気に溢れた学生達の中に消えていきました。 代わりに下ネタによる気まずさだけを残して。 「会長はやっぱり忙しい方なんですねーあー大変そー僕も代表生徒として手伝ってきてあげよーうふふー」 「おい」ガシッ 「ていう冗談は置いといて、えへへ(*´∀`)」 「冗談では済まさないぞ? 山田?」 会長のはスルーしたくせに! この椎名さんのバカ! アホ! ドジ! ハゲ! クソジジイ! ていうのは全部嘘で超美人! ちょっっぴりふざけて逃げ出そうとしたら、椎名さんがすかさず俺の体育着をぎゅっと掴んできました。あはは、ちょっとだけ肉も持ってかれてて痛いわー。 「会長の冗談はスルーしたのに、ぐすっ」 「いいから練習するぞ。私と組むのだから根性も無ければ務まらないぞ?」 えー、それなんてブラック企業ですか? 「とりあえず先に行っててくれ。私も少し用事が残っているから、それを終えたらすぐに行く」 「でもそれじゃあお互いがどこに居るのか分からなくないですか? それに体育祭期間とはいえ、まだ外出届出してないですし」 自分がそう言うと、きっと無意識のうちにドヤ顔になったんでしょうね。椎名さんが妖艶な表情で答えてきます。 「ふっ、それも今から私が二人分出してくるさ。そうだな……では隣駅のコンビニに12時に落ち合おう。ちゃんと練習するんだぞ!」 言いながら椎名さんもまた掛け声の飛び交う集団の中へと消えていきました。バカみたいに晴れた群青色の空の下、校庭の端に立つ僕は、目の前に広がる青春の光景を眺めながら思います。 うし、サボるか。
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