第3章 来たれ体育祭

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さ、という訳で場所は変わって校舎内です。サボると言っても一応隣駅までは走らなければならないので、ジョギング中に音楽でも聞こうかとウォークマンを取りに来ました。 その前に給水もしたいので、自動販売機でミネラルウォーターでも買いますかね。 「百……三十円、と」 アクエリアスが売り切れていたのでポカリにしました。そもそもアクエリアスとポカリってどっちが良いんでしょう? 個人的には訳もなくアクエリアスを選びがちですが。 さてと、代表生徒室に行きますか。 この時期は、自分は教室では無く代表生徒室に直接登校しているので、バックもそっちです。いやー、朝から放課後まで書類を作るのは大変ですよ。この学校はほとんど行事は生徒が率先してやってますしね。 昨日は二年生の徒競走の出場順の一覧表を作成してました。そろそろ掲示されるんじゃないんすかね。 そんなことを思い闊歩していると、廊下の一番奥に代表生徒室が見えてきました。少し前まで教材室と貼られていたパネルも誰かがいつの間にか変えてくれたみたいです。妖怪の仕業かな? ガラガラガラ 「んちゃー」 誰も居ないのに、扉を開けるときってなんか言いたくなりますよね。自分はアラレちゃん派です。 と、思いましたが、顔上げてびっくり。あのお方が座られておりました。 「あら、ついには室内でサボるおつもりかしら?」 ミス・猫かぶりこと、綺菜ルシストさんです。 「違いますよ。これからジョギングして来るんです。もうこっちのチームにはスパルタ人が居て困っちんぐですよ」 「そう、楽しそうね」 え? 思わず顔を見ます。声量もトーンも普通に聞こえましたが、どうしてこんなにも哀愁を感じるのでしょう。気のせいっすかね? 「ま、せいぜい頑張ってね、山田くん」 こっちを見ずに、目の前の書類とにらめっこしながら呟いてきます。 「あ、そういえば一つ聞きたかったんですけど」 自分のバックを漁りながら、綺菜さんとの会話を繋いでいきます。やたら興味無さげの声で「ん? なにかしら?」の後に「この書類は午後までに仕上げて、と……」と聞こえてきます。 「自分ってもしかして悪い意味で有名なんですか?」 「え?」 今まで文字を見ていた大きくて綺麗な目が、初めて自分の両の目を捉えてきました。
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