第3章 来たれ体育祭

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あー、これはあれですね。無自覚に質問をぶつけて相手に「うわ、こいつ知らなかったのかよ」て思われるパターンですね。 「い、いやー、そんなことないんじゃない?」 え? あ、そうだったんですか? じゃあこれはあれですね、逆に「は? 自分が悪名高くてカッコイイ! とでも思ってんのかよ」と思われるパターンのほうっすか。 「そうでしたか。なんだか綺菜さんも初めて会ったときに自分のこと知ってたみたいだし、さっきもちょっと似たようなのがあったんで。変なこと聞いてすいません」 「は、はぁ? あ、あなたのことなんて知らなかったですし、そもそもこの高校は一学年の人数が多いからよっぽどじゃなきゃ有名になれないし」 じゃあランキング一位のあなたはよっぽどなんですね。 まあでも確かに、なぜか動揺しつつ答える綺菜さんを見て、やっぱり可愛いなーなんて思っちゃいます。てへ。 やっとウォークマンを見つけた自分は、それをポケットに入れます。変な入れ方したから絶対イヤホン絡まってるなこれ。しかもバッグの中に予め買っておいたアクエリアス入ってたし。 「そんなことなんてどうでもいいでしょ? 私も忙しいから早く練習に戻りなさいよ」 あ、良いことヒラメいた。 「はい、これ。綺菜さんにプレゼント」 手に持っていたポカリを綺菜さんの机の上に置きました。はてな顔してます。 「いやー、お互い暑くなってきた中で忙しいですからね、頑張るのも大事ですけど、たまには水分補給して休憩も大事ですよ」 「君はいつも休んでばっかのくせして」 「あはは、なんのことだがちんぷんかんぷんです」 相変わらず素直に受け取ってくれないなー。ま、この人がそういう人だってよく知ってますし。 さてと、自分も練習に戻りますか。 これ以上はなにも会話しないまま、部屋を後にしようとします。しかし、ドアに手を掛けた時に小さな声が聞こえてきました。 「あっ! あの……その……」 足を止めて、もじもじしている彼女の方へ振り返りました。 「これ……ぁ、ありがと……。そ、それだけ!! 早く練習に戻って!!」 可愛いんだかなんだかよく分かんねぇわ。
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