第3章 来たれ体育祭

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「あー、だりー」 持ってきていたジャージに身を包み、校門の前でストレッチしながら呟いたネガティブな言葉も、もはやこのバカみたいに晴れた空の下では青春を謳歌しているようにしか見えないでしょう。 どうしてこうなったし。 そんなことを考えてもこの空の下では以下略なので、手に持った四角い画面に目を落とすと、CD市場の衰退とネット黄金期を象徴するが如く、流行りのアーティスト達の名前が列挙されています。 最近自分がヘビロテしているのは、あるアイドルグループのアルバムに収録されていたソロ曲。 最近のアイドル達は親しみやすさを第一に売り出しつつ、そこに斬新さを取り入れながら競争していると思ってたんですが、たまたまネットで耳にしたこの曲を聞いたときに衝撃が走りました。 なんだこいつ、めちゃくちゃ歌うめえな、って。 今までは一アイドルグループの一メンバーとしか認識していなかったのに、こんな伏兵を潜めていたとは。 能ある鷹は爪を隠すとはよく言ったものです。いざ、自分の中の『最近のアイドルはどうせ』というハードルを易々と越えられたとき、その親しみやすが牙を剥いてきます。自分みたいな被害者はきっと少からず居るでしょう。 「ハァ、ハァ、久々の運動は身体年齢米寿の自分には、昨今のサラリーマンに突きつけられた懐事情のように厳しいぃ……!」 そんなことを考えていたら、駅まで半分ぐらいのとこまでやって来ました。あちぃ、太陽自重しろや。だから冥王星に逃げられたんだよ。 しかし、平日の昼間の大通りは、やっぱり主婦の方々の自転車が目立ちますね。 でも一本脇道にそれると、小洒落て静かさの満ちた住宅街が広がります。今だってほら、そこの左折した先を見れば新築が軒を連ねて…… 「やはり夜更かしした次の日の学校はだるいのだよ。しかも体育祭期間なんて忘れてたから、危うく体育着を忘れかけていたのだよ。あー、やだやだ、男子から視姦されるわー。つらっ、これも美少女に生まれた宿命かー。もう僕疲れたよアンジャッシュ」 いやパトラッシュだわ!! て、いやいやいやいやいや。そこじゃないよな自分。突っ込みどころそこじゃないよな自分。もっと色々あるよな自分。 例えばほら、独り言なげぇな! とか。 まあ、いいです。とにかくスルーしましょう。見知らぬ人に声は掛けちゃダメだってばっちゃが言ってましたし。
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