第3章 来たれ体育祭

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「あー、最近徐々に気温が増してきたのだよ。何かの手違いで雪降ってくんないかな? いや、本当ここらで一旦落ち着くために雪降らした方がいいと思うんだ僕は」 独り言のレベルたけぇな、おい。 整備された広めの歩道を走る自分から、目測十メートルぐらいの左前方に立つ彼女。お互い同じジャージ。なんの偶然か同じ高校の生徒という事実、そしてこんな時間帯からの登校、独り言の内容、それら全てがこう訴えてきます。 あの人に関わったら、なんか色々なんかあれな感じになんかですわ。 幸い向こうはまだこっちに気付いてない様子。行ける……! 俺にならできる……! ラブコメの主人公みたいな巻き込まれ体質は持ち合わせていませんよ!! 「ハァハァ……………………」 「…………あれ? 同じ高校の生徒を発見したのだよ。やあ、奇遇だね、どうして学校から遠ざかろうとしているのかい?」 「あはは、ちょっと日本語分かんないやそれじゃあ」 やばい逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ。 「おや? 日本語が分からないのに日本語を話すというこの矛盾した状況を文化的問題と取るか、あるいは思想を宗教や倫理観を跨いで歴史的問題の領域まで広げるか、ここに僕は議論の余地を見つけたのだよ。よって君を全力で止めるのだよ」 「ごめん今のあなたの発言は本当に日本語だけど理解できなかったグハァッ!」 タックル!? タックルですと!? すらっと細身の女性がお腹にタックルですと!? こいつはやべぇや!! 「立てるかい、アンジャッシュ?」 パトラッシュだわ! いやちげぇわ! 山田だわ! 手を差し出してくれた女性の手を借り立ち上がって、初めて変人さんと対峙しました。 くりっくりの丸い目。ストレートにしたら首元までありそうな、やや癖のある髪がショートヘアを保っています。夜更かししたと言っていたけれど、程よく色のついた健康そうな肌と、自重を知っているお胸さんはまさにスポーツ美少女という雰囲気です。 「やあ! 初めまして。僕の名前は教えないけれど君の名前はなんだい?」 そんな始まり方するクソゲーがあったら、自分は即刻BOOK・OFFに売りますよ。 「なんて嘘だよ。僕の名前は沢村千尋(さわむらちひろ)。ねえ、君の名前は? 児嶋かな?」 「山田だよ!」 思いっきり本家のパクリになってるじゃないですかこれ!!
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