第3章 来たれ体育祭

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「いや、だから! 君は山田真廣君だから、えっと……あれ? いざと言うときに語彙に見捨てられてる!?」 もう曲聞いていいですかね? 「待って! えっと……あ、そうだ、僕も自己紹介が足りなかったんだ」 そう言うと、沢村さんは持っていたカバンを開け、中からなにかを取りだし自分に見せてきました。 「二年生徒会役員の沢村千尋なのだよ。署までご同行願おうか?」 生徒手帳を警察のそれっぽく見せられても困ります。 「あー、生徒会の方でしたか。いやー、何となくキャラが濃いところとかで予想はしてたんですけどー、んー、まあやっぱなって感じです」 「なにその手慣れた感じ!?」 曲を流すことを断念し、沢村さんの生徒手帳を見てみます。そこには可愛い顔の写真や本名の他に、所属欄に生徒会と陸上部と書かれていました。 「あ! ち、ちょっと恥ずかしいからあんまり見ないでよ!」 いや、あんたが見せてきたんでしょーが。 ふぅ、と溜め息を溢し、手帳をバッグに戻した沢村さんが、その丸い瞳で自分を見てきます。 やや虚ろとも感じることのできる視線ですが、はっ! と急に我に帰ったように沢村さんが口を開きました。 「そうそう、それで山田君のことは前々から知っていたのだよ。会長が『もし僕が男もいけるようになったら、それはきっと彼のせいだ』て話してたし」 おい、あいつ俺のことどういう風に話してんだよ。 「にしても山田君は噂通りの雰囲気なのだよ。これから一緒のチームでよろしくなのだよ!」 「あ、こちらこそ。でもなんで沢村さんはこんなところに居るんですか?」 質問すると、沢村さんの目がキラリと光り、口角がニヤッと上がりました。 「ふっ、実は僕、ここら辺に住んでるんだ」 いやそういうこと聞きたかったんじゃ無いです。 「あ、そうだ!」 突然なにかを閃いたようで、持っていたカバンを自分に渡して、沢村さんは踵を返してしまいました。
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