第1章 始まり

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で、迎えた放課後なんですが。 部活動に精を出す生徒たちと、オレンジ色の町並みが見える渡り廊下を一人教材室を目指し歩いていく。 「……めんどくせぇめんどくせぇMAXめんどくせぇ」 昔こんな芸人さんいませんでした? 渡り廊下の角を曲がった先の、一番奥にある教材室。入り口の上の『教材室』のパネルを確認して、俺はそっちに歩を進める。 普段生活してたらひとっこ一人来なさそうな教材室の前まで来た俺は、その戸に手を掛けようとしたんですが、なんか聞こえてくるんです。 なんか、聞こえてくるんですよ…… 『……ふむふむ。なるほど! こうして体育祭の競技順は決まっていくんだね!』 …………。 …………独り言X JAPAN並みに激しくね? 扉越しにも、むしろちょっと廊下にも響いてそうな勢いで、中に居る誰かが独り言を呟いています。そういうの流行りのSNSに呟いてくれてたら今なんの躊躇いも無く教室に入れたのにな…… 帰り……ましょうかね。 そんな具合に俺のゆとり思考をフル回転させて、今来た道を俺は引き返すことに決めた。 普段から女の子とあまり積極的に過ごしてない俺が中に居られるであろう御方と二人きりの放課後を過ごすのは、それはもうそのハードルはエベレスト並みに高いことが簡単に推測されますので、自分はここいらでドロンさせていただくだけでございます。 バン! しかし無情にも急に内側から教材室の扉が開きました。 「あ、やっと来てくれた! もう、ずっと待ってたんだよ、山川くん!」 「…………山田です」 これが精一杯の返答でした。 中から現れた女子は、何となくの雰囲気でさっき生徒会室にいた生徒であることは理解できたんですが、こう、マジマジと見てみると中々の美少女でした。 腰まである長い黒髪に、大きくて丸い瞳。好奇心旺盛に俺を見ているのが分かります。清純派という言葉がぴったりはまる彼女は、そのスカートから伸びたスラッとした足を開き、仁王立ちしていました。 「えっと……お名前を聞いても?」 「え!? こんな可愛い私の名前を知らないの!?!?」 またその癖の強さが見え隠れする発言をぶっ放ってきやがりました。
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