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「その手にある雑誌を戻せ。早速練習しに行くぞ」
椎名さんに促され、強制的に俺の手にある雑誌は元の山に戻り、大勢の雑誌の中のただ一つと化していきました。
バイトの人でしょうか、レジに立つ女性の人の「ありがとうございましたー」という何も買っていない自分達に掛けられた無感情で事務的な声と共に、俺達はコンビニを後にしました。
途端に地味な熱さが体を包み込みます。はあ、練習やだなあ。いくら隣に各大手企業の社長が血眼になって争奪戦を繰り広げそうなほどの美人が居るからって、熱さと距離は変わらないですからね。
「よし、とりあえずは私のペースについてこい」
しかしスパルタ人もとい椎名さんは、一切の躊躇も無く走り出しました。
「し、椎名さん、速いっすよ」
「む、そうか、なら少しペースを落とそう」
「あ、助かりまんもす」
「あんまり視線を下に下ろすな。辛かったら、ほら、大通りの景色とか線路沿いのデパートとかを見ながら走ると飽きもしないぞ」
…………なんですかこの飴とムチは?
若干の深読みをしながらも、左右を流れる都会な街並みを見ながらランニングを続けます。
そして、ちょいちょい椎名さんに気を使ってもらいながらも、なんとか椎名さんの感覚からして学校の裏に位置する山に到着しました。
この山はそこまで高さが無い分、登山よりもレジャー施設としての色が強く、入り口は大きな公園として遊具や芝生やランニングコースが整備されていて、休日なんかは家族連れでごった返します。
ランニングコースは頂上近くまで続いていて、距離と傾斜から区民マラソンなんかに出るガチ勢がよく走っていて、自分なんかが居るとやはり浮いてしまいますね。
「よし、早速行くぞ」
「ひょえぇぇぇぇ!!??」
毎日ハードに働く体で、休みなしのランニングはキツいものです。
それに、さっきと違って木々ばかりの単調な景色の中を走っていたら、疲労感も全然違いますし。
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