51人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「ハァ……ハァ……」
山中を走ることにおいて、椎名さんの斜め後ろに位置することの大切さに気付きました。何故ならば
「…………む? どうした? さっきから私の顔ばかり見て」
「いや……景色よりも……椎名さんの横顔のほうが綺麗で飽きないので……ハァ……ハァ……」
「そんな見え見えなお世辞を言ってもペースは緩めないからな」
別にそんなこと狙ってなかったんですけども。
「…………」ジーッ
すると今度は椎名さんが数歩分だけペースを緩め、自分の隣まで下がって俺のペースに合わせながら、こっちを目を細くして見てきています。
「ハァ……ハァ……なんでしょう……?」
「……そんなに辛いか?」
「いえ別に」
「……そんな強がるボケを出来る程には、元気があるのだな」
くそう、咄嗟にふざけてしまったあ!
まあそれでも辛いと思いながら走るよりは幾分楽になりますが。
もしかして椎名さんは和むように色々話題をさっきから提供してくれてるんでしょうか?
だとすれば美人は性格もいと美しです。
「ほら、折り返し地点が見えてきたぞ」
つまるところ、頂上が見えてきました。ウォークマンの時計を確認すると、学校を出てから約50分が経過していたことが確認できます。
流石に頂上では一回休憩挟みますよね……? 無かったら死にますわ。
「よし、少し休もう」
頂上に着いてすぐ椎名さんが発した言葉が、自分には天使の囁きのように感じました。
マヂ帰りもぁるとか無理。。。リスカしょ。。。
脳内がスイーツな携帯小説を書く女子高生に犯されたかのように故障してしまったので、近くのベンチへと歩みより、二人分のスペースの右側に腰を下ろしました。
「よっこらしょういち……ふぅ」
脱力して一息吐いた自分を見て、椎名さんもベンチへと歩み寄ってきました。しかし、そのクールな顔は少し困ったような表情を浮かべています。
俺の体力の無さに呆れていたのならフリーザさんの真似をしよう……俺は変身をあと二回残している、この意味が分かるか?とか言って誤魔化そう。うん、そうしよう。
俺、戦闘力マイナ3億のゴミだけど。
「…………なあ山田。やはり少しペースが速かったかな?」
「ふっ、案ずるな。俺はあと変身を二回残している、この意味が分かるか?」
「もし速かったのなら言ってくれれば帰りは少しペースを落とすが……どうだろうか?」
あ、無視された。
最初のコメントを投稿しよう!