第4章 行きますよー

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自分のボケなど誰にも言及されずに風化し、記憶されることすら申し訳ないほどの代物だとは自覚していましたが、如何せん今のボケはスルーされたというより気に止める余裕が無かったように感じられます。 こんなに困ってしまって、いったい椎名さんは何をそんな気にしているのでしょう? 「いえ、ペースは椎名さんが決めたペースでお願いします。自分はあくまでそれに着いて行くだけですから」 少し強がって答えてみました。しかし、一向に彼女の顔から困惑の気配は拭えません。 「……まあ、山田がそう言うのならいいんだが……」 どうしたんや、椎名はんよ。君の身にいったいなにが起こったと言うんだね? 生理か? 生理なのか? 男の自分には触れられたくないんか? 「ま、まあとりあえず隣空いてるんでどうぞ」 微々たるものですが、事実より気遣いと思い、椎名さんの為に自分は少しベンチの端に体を動かしました。 大してスペースの変わらなかった場所に、椎名さんがゆっくりと腰を下ろします。二人の間には拳二つ分のスペースが空いていて、それが物語るように変な空気が流れています。 「…………なあ、一つ聞いていいか?」 「はい、なんでしょう?」 「その、わざわざこんなこと強制させて…………い、いや、なんでもない」 前半はよく聞き取れませんでした。やはり生理は言い出しにくいものなんでしょうか? 確かに自分としても「ルナルナが良いらしいよ」としかアドバイス出来ませんし。 ここは男の俺が空気を読んで行動する他無いと心得た! 「いやー、久々にランニングするって気持ちいいですね! やっぱり運動不足は良くないなー」 「え?」 「最近体力不足に悩んでましたし、これをキッカケに少し運動するよう心掛けます。それもこれも椎名さんのお陰ですね! ありがちょんまげです」 「山田……」 体育祭本番までにはまだまだ体力不足のままでしょうけど、それでも代表生徒として体力必須のお仕事が近い間にででーんと姿を現すでしょうし。 遠くの景色を見ながら続けます。 「だから少しでも努力して、椎名さんの足引っ張らないように努めるんで、一緒に本番頑張りましょうね」 あれ? なんか柄にも無いことがお口から。 言い終わってから恥ずかしさを覚えます。それでも場の空気が軽くなればいいなーと思いながら、隣の椎名さんに視線を送りました。
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