第4章 行きますよー

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はずいから早くなんか喋れ喋れ喋れ喋れ喋れ喋れ喋れ喋れ喋れやおいこらはよ喋らんかい。お? そんな心の中のリトル山田の声とは裏腹に、長い沈黙が続きます。 「…………ぷっ」 その沈黙を破ったのは、椎名さんの笑い声でした。 「ぷっ、あはは、あははははははは!」 「ちょ、急に笑わんでくだせぇなあ……姉御……」 「あはははは! い、いや、すまん……ウフフッ……で、でも……!あははははははは!」 なんですかこの羞恥プレイは。 「あはははは! はぁ……はぁ……はぁぁ、やはり君は、フフッ、おかしな人だな……ぷっ!」 椎名さんの笑い声はまだまだ終わらず、隣にいる俺は止まない雨など決して無い精神でじっと待機を決め込みました。 いつしか自分が困惑する番ですね。 やっと椎名さんの笑いが収まったとき、自分はそもそもどうしてこうなったのかなど最早覚えてなくて、肩で呼吸を整えながら西野カナ並みに震えている椎名さんが喋り出すのをじっと待っていました。 「ふぅ……まさか、君がそんなことを言うとはな」 そんなにクサイ台詞言ったのかな……? 「杞憂だったか……まあ、君がそう言うのなら、これからもずっとこのままのペースで走ろう」 突然椎名さんは立ち上がり、自分に背を向けたまま歩き出してしまいました。しかし、自分は刹那の瞬間に見た気がします 「ほら、いつまで休んでいる? 練習を再開するぞ?」 椎名さんの顔が、仄かに朱色に染まっていたのを。 「ええ? もうですか?」 「そうだ、ほら、行くぞ」 休憩短すぎですよ。労働基準法に反してますよ、この短さは。 学生身分の自分が、本分を果たすべき場所である高校から離れたお山さんの頂上で、労働基準法を主張する資格も権利も皆無でして、椎名さんはもうすでに走る準備万全のご様子です。 結局彼女は何で悩んでいたんでしょう? もしかしてせいrおっと大人たちからの見えない圧力が。 「山田」 突然鋭く、それでいて穏やかな声で呼ばれました。 「二人三脚…………き、君がペアで良かったと思っている」 今度は100%の自信を持って言えます。 僅かに余裕のあるジャージがくるりと揺れ、その細い曲線美を強調するように振り返った椎名さんの顔だけが、見開けた頂上から見える蒼いペンキをぶちまけたような空を背景に、紅く対照的であったことを。 少しだけ、努力って良いなって思えたこの頃です。
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