第2章 ヒナたちの覚醒。

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 飛翔する3体の巨大竜による激闘は敵、邪龍の突然の逃走に よって一旦その幕を閉じた。    戦闘中、持てる能力を限界近くまで発揮していた愛梨と早苗 は、その後も上空で敵を追跡、哨戒行動を続けていた。  2体の神龍機は平行するように、周囲を警戒しながら飛行し ている。  眼下には太陽の光を受けて、鈍く銀灰色に光る……海。  高濃度の有害物質に汚染され生命を育む力を失った 海が、降り注ぐ太陽光を反射しながら広がっている。    頭上に輝く真夏の太陽は、頂点から徐々に高度を下げ始めて いた。その輝きは前世紀から何一つ変わっていない様にも見え る。  その距離、地球から約1億5千万キロ。表面温度約6000度。  宇宙空間に浮かぶ、超巨大核融合炉とも言うべき天体。  地球上に生命をもたらすために必要不可欠な要素であり、45 億年以上も昔から地球に光を送り届けて来た存在。  それは今、この瞬間にも輝き続けていた。  太陽系の主として。環境が激変した地球上に於いて、なおも 輝きを失わずに存在していた。  依然として青い空。  太古の空がそうであったように。そして近代、失われる以前 の時代の空もまたそうであったように。 (風を感じられたらいいのに)  神龍機の内部で精神体と化している愛梨は、作戦行動中であ るにも拘らずふとそんな事を考えてしまう。  ハイドラは現在高度5000メートルの上空を飛行中。そこには ジェット気流と言われる空気の流れ、風の動きがあり彼はそれ を全身で感じている筈だった。 《風を感じる。ねぇ愛梨。今のところ風速は40メートル程度だ けど、これってそよ風かな?》 《あのねぇ、ハイドラ……いくらあたしがエクストラだからっ て、基本的な感覚はノーマルと同じなんだけど。外部 感覚はオフにしてるし》    それはハイドラが『ヒト』との関係を持つ事で獲得した形質 の一つ、ユーモアのセンスというべきものだった。  初めの頃は愛梨もそれに驚いたものだ。でも、今では極普通 の日常的風景となっている。    現在、愛梨の外部感覚は通常の、素体時の感覚とは違い何十 倍にも強化されている。視覚、聴覚、触覚……。  だが、それをそのままの状況で入力している訳ではない。  必要に応じて、いや、素体にとって過負荷となり過ぎるもの も中にはある為、不必要なものは素体レベルまで知覚を低下、 或いは遮断しているものもある。  
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