第2章 ヒナたちの覚醒。

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 素体……神龍機を制御する為に『創造』された、精神能力に 特化した生命体。  その、機体内で保護されている素体だが、サイキックの精神 伝達力が時として予想外の事態を示す事がある。  例えば極端な刺激に対する痛覚など。   《そりゃあ、残念だね。でも、それだと僕との感覚の共有は出 来ないね》 《あなたとはあたしとでは許容出来る感覚の容量が違うのよ。 融合素体が知覚の上位支配してるって事、知ってるでしょ。知 覚の感応変換でレベルダウンしてるから済んでるけど、まとも に喰らえばたまったもんじゃないわ》    飛翔するハイドラと、彼の内部で感応力によって意思疎通を する愛梨。  通常の通信機材によらないそれは、通信方法として特定され た相手を受信者とする、限定的な通信には向かないという欠点 を有していた。  更にテレパシーは思考の全てを精神波を通じて運ぶ能力。そ の力を有する者達の間では時空間を超越してさえ通信可能。  それはつまり、二人の会話や思考内容の全てがテレパシーを 通じて、ガイアのオペレーターである早苗にも届いているとい う事だった。  愛梨もそれは承知のうえで、ハイドラとの会話を続けてい た。 《愛梨、ぼくの中にも……ガイアとそのオペレーター の意識と、思考が流れ込んでくるよ》  そう言いながらハイドラは警戒心を高めていた。彼には、愛 梨以外の者との精神的接触には抵抗があるらしかった。 《抵抗感じるよね。いくらテレパシーで統合精神を有する状態 と言っても、あたし達には個体としての意識があるんだし。彼 女との意識共有はあたしにも抵抗があるわ》  愛梨も素直な気持ちでハイドラの考えに同意する。感応能力 者ならではの悩みを、愛梨も持っていた。  統一された精神の集合体。全ての意識体が一つとなって完全 な集合的知性体を形成する存在。群体。別名……レギオン。  愛梨達のような精神能力を中心として、更なる進化の過程を 踏み始めた一群の中から発生した者達。だが、まだそれは不完 全な集合体の段階でしかなく、以前として《個》が優先され、 分離を望む段階の者が圧倒的多数の状態だった。  むしろ、ここからはるか南に位置する大都市、通称 《機械化帝国》と呼ばれる都市の、電脳化されたハイブリッド 達が、それに最も近い存在かも知れなかった。  
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