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後輩に小突かれ、どうにか意識を元に戻した愛梨が言いかけ
た瞬間、店内の道路に面したガラス越しに眩い閃光が走り、付
近の街路樹を薙ぎ払う様が見て取れた。
ついで激しい衝撃波が辺りを襲う。
空中にはスライスされ輪切りになった樹木が、まるで木の葉
のように舞い上がっていた……
キェェェ―――ッ!と言う金属的な「鳴き声が」辺りに響き
渡り、窓ガラスがすべて吹き飛んだ。
今回は瞬間的に能力を使い、シールドを自分の周囲
に展開させ、降りかかってくるガラスの破片から身を守る。
破片はシールドに弾かれ、キラキラと光を反射しながら床に
落ちて行った。
最初の衝撃の段階で他の客は避難しようとしていたが、状況
がそれを許さなかった。
小さな女の子を連れた母親、ビジネスマン風の二人組、それ
に店のスタッフが数名。
それぞれが店内の隅や、テーブルの下で幾分怯えた
様に辺りを窺っている。
だが、幼い娘をかばう母親を見た瞬間、愛梨はその母娘、少
なくとも母親は自分達と同じサイキック……超能力者だと言う
事に気が付いた。
娘を抱き締めたその周囲には、強力なシールドが張られてい
るのを愛梨は感知していた。
一方、ビジネスマンの二人組もこんな状況下でもうろたえる
事無く、冷静に状況を見ていた。
緊張した表情は隠しようも無かったけれど、それで
も落ち着いた様子を保ち、この店内からの脱出のチャンスを
待っているようだ。
勿論ここのスタッフたちも同様だ。災害マニュアルに沿った
行動を速やかに行い、自分達も脱出に備えている。
不安な気持ちを押し殺し、外へ飛び出して行くタイミングを
それぞれが見計らう。
だが外部の様子を透視力によって確認した愛梨には、この場
にいる全員が無事にシェルターまで退避する事は、例え美瑠羅
から防御の為に力を借りたとしても、とても困難であるように
感じられた。
愛梨と美瑠羅は互いに顔を見合わせ、テレパシーによる思念
の送受信を開始した。
《先輩…解ってますよね?こういった場合の対処法》
《勿論。対特殊生物強襲部隊への連絡、或いは…独自判断にお
ける戦闘行為の開始。前回のレクチャーでみっちり、戦闘時の
能力の使い方を訓練させられたわ》
《自信の程は?》
《シミュレーションでの戦闘ならバッチリ、何だけど。
実戦となるとね。でもやるしかない》
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