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橋本奈々の死に方が最も無残だった。
死亡した場所は他の二人とは違って自分の部屋だった。
しかし、そもそも自分の部屋というのは様々なものによって完璧に守られている場所だ。人の最も堅牢な聖域といえる。
自室はさらに、プライバシー、家族の目、家庭の防犯、近所の目、によって幾重にも守られている。
それこそ、自ら死のうと思ったとしても、家族が駆けつけて来て阻まれるだろう。
それを白昼堂々他人が忍びこんで殺すなんて不可能―なはずなのに、死のアプリはそれをいとも簡単にやってのけた。
死因は自殺ではない。
それは状況証拠、というよりは素人でも一見してもわかる。
何しろ、首と胴と下半身が分断されていたのだから。
橋本奈々だったモノは胴体は椅子に座り、切り離された頭部が目の前の机に置かれていた。
まるで自分の無様を見せつけるように。
足は手が持っていた。いや、持たされていたというほうが正しいだろう。
フライドチキンのように真っ二つに裂かれた右足と左足は、それぞれ右手と左手によって持たれていた。そこにはある種のメッセージが伏されているようでいて、特に意味がないようにも見受けられる。
わかる事実は、
自殺ではない、ということ。
犯人の見当が皆目つかないこと。
もちろん晴香が疑われることもなかった。
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