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イジメ
少女の短い指が画面をタップすると、画面は真っ白に切り替わって「Not Found」の文字が浮かび上がった。
無垢な唇からフゥとため息が漏れた。生温かい秋の空気の中で、それは、まだ見ぬ王子様を待ちくたびれたみたいに切ない色を帯びていた。
「なあに? なになになになに?」
灰色とブラウンを混ぜた髪が、攻撃的に跳ねながらクラスメイトの顔を覗きこんだ。
「ため息なんかついちって」
「もしか恋!?」
派手さを抑えたアッシュピンクの髪が、消防車のサイレンのように大仰な声で言った。
「ち、ちが――」
少女が否定するよりも早く、ギャハハハと下品な笑い声が教室内に響いた。
「晴香に限ってそりゃねーべ! ウケる! ざぶとん1枚」
「あざーっす」
煌びやかで毒々しい爪を額に当てて、ピンク髪が言った。
「ハハハ……」
黒髪の少女――西田晴香は愛想笑いを浮かべた。空っぽの笑い。空っぽを吐き出したはずなのに、心にはさらに空虚が広がる。
「でも、マジでさ、彼氏できたら言ってね」
「い、いないし、できないよ」
おどおどと答える晴香の机に、二人は身を乗り出して言った。
「いや、マジでぇ」
「できたらぶっつぶしてやっから」
再び二人は笑ったが、その目はテストの時より真剣だった。
「なんたって晴香の――」
「処女!!!」
「――を奪うのはうちらだかんね」
「ねー」
二人の冗談に、しかし、晴香は顔を真っ赤にしてうつむいた。
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