自覚なき殺人

1/4
前へ
/24ページ
次へ

自覚なき殺人

藤枝美羽は翌日死んだ。 死んだ場所は家の近くのコンビニだった。それもトイレの中。 セーラーの制服姿で便座に腰掛けたまま息絶えていた。死体の右足には下着が引っ掛かったままになっていた。 死因は脳挫傷―とは表現としておかしいのかもしれない。何しろ、頭蓋骨に損傷はなく、脳自体が無くなっていたので〝損傷〟とは言い難い。 一体どうやって中身は無くなったのか。 脳と一緒に無くなっているものがあった。それは彼女を特徴付けていたもので、男子を惹きつけていた目だった。 脳はその穴からスプーンでほじくられたのだった。 一体なぜ、そんなむごい殺され方をされたのか? と、いうことよりも、世間の注目は摩訶不思議な現場の状況に注がれていた。 何しろ、コンビニのトイレの中である。 店員の目も客の耳もあればカメラもある。おまけにトイレはしっかりと施錠されていた。 窓はなく、床も抜けれるような穴はない。 一体全体どうやって殺されたのか。警察もお手上げだ。 まさに完全殺人だった。 完全密室。 痕跡皆無の謎は世間を震え上がらせた。 ゾっとする世間を尻目に、晴香自身はというと……ホっとしていた。 これなら私だとバレるわけがない。 ……後の二人も殺せるって。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加