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参 鞘心
空の間──残夜。
「健さん、これ食べて」
「いつも悪ぃな。ウチのがチャコの作る料理は最高に旨いってさ」
「ダメ~、アタシは健さんにだけ食べて欲しいの。秋茄子は嫁に食わすなっていうでしょ」
聡明で美しい私は、その言葉の意味するところが少しばかり違うことを知っている。
「健さんとこうなれる日を、イチニチチアキの思いで待ってたんだから」
「イチ……なんだって?」
チャコとやら。それをいうなら一日千秋だ。さっきから血の巡りが悪いにも程がある。男の胸元からは倶利伽羅が覗いていた。ふん、社会のダニめ。
チャコから衣服を乱暴に剥ぎ取った健とかいうダニは、自らの下半身も露わにした。熱り勃つ二本のファルス。孕む恐れのない性交であれば、もはや私の出る幕ではない。高みの見物と洒落こむ。
「おっと、忘れるとこだったぜ」
ダニ健が私の体を掴み上げ、裸にした。よせ。何をする。私の本分は男女の営みに安寧を齎すことだ。貴様らのような禍々しい輩の情交に使役などされてたまるか! 下がれ、汚らわしい。
「おい、どうだ? チャコ」
通常のそれよりオクターブほど低い艶声。私はそれをチャコの肛門管、ならびに直腸で聞いている。
「いゝ……いゝ」
ダニ健の一物を包む私を、得もいわれぬ蠢動で締めつけてくるチャコの括約筋は、私の知るどの女陰よりもしなやかで融通が利いた。もっともチャコのそれは本来性交を行う部位ではないのだから、それらと同列に扱って然るべきものではない。しかし現実として粘膜の伸縮をこれほどまで自在に操れるそれが、果たして他に存在するだろうか──いや、チャコのそれに優る神秘など、この世に二つとあるまい。
「最高だ……チャコ」
熱を帯びた声でダニ健がいう。私も同じ気持ちだった。
「ああん、もっとしっかり抱いて」
チャコが身をくねらせ、切なさを訴える。
「そうじゃないとアタシ……あゝ」
「はあ、はあ……そうじゃねえと、なんだ」
「アタシ、他の男好きに……なっちゃうよ。あ……」
「そんなこと、絶対に、許さ、ねぇ」
「じゃあ強く抱いて! 骨まで愛して! アタシを壊して!」
「こうか!」
「もっとよ! 女心は変わりやすいの! あゝゝ」
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