アフターデイズ

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「一!」 麻海はボールを一にパスする。 回転が少なく真っ直ぐ転がるボール。 非常に正確でとりやすいパスだ。 「って、うわっ…?!」 一は根っから文化系。 普段は運動などほとんどしないため、麻海のパスをうまくさばききれずに足がからまり、その場でコケる。 笑いの渦が巻き起こったのは言うまでもない。 「大丈夫?」 手を差し延べてくれる麻海でさえ、目のはしに涙を浮かべている。 「…うん、ごめん恥かかせて…。」 「全然!楽しいから問題ない!」 麻海は一に笑顔を向ける。 「兄貴ナイス!」 と茶化すのは彰。 どうやら一を気にいったらしい。 「…ごめんね、麻海とラブラブで。」 茶化されたのが気に食わなかったのか、ただからかいたかったのか、一はそう言うと麻海の肩を抱き寄せる。 これには麻海のが赤面してしまった。 「ケンカ売ってんのかよ?」 口ではそう言っていても、顔が笑っているので、怒ってはいないのだろう。 「言ってみたかっただけ。」 一は薄く笑む。 「自慢?」 「うん。」 「かーぁ、いいねぇ、ラブラブで。」 GKを務めていた少年が言う。 「褒め言葉として受け取るよ。」 「アンタいいね。」 少年はにかっと笑う。 一からしてもこんなに人と話たのはいつぶりだろう?という感じだ。 「…私一がこんな人だと思わなかった。」 「そう?」 「うん、でもこっちも好きー」 麻海は小さく呟くと一の側を離れる。 恥ずかしくなるとすぐに逃げる。 そんな麻海の癖はすでにインプット済みだった。 「ありがとう。」 (拒否じゃなくてよかった。) ふっと心を撫でおろす。 こうして二人はまた一つ、お互いを知っていくのだった。
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