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フットサルを心ゆくまで楽しんだ後、辺りはすっかり真っ暗になっていた。
彰達とはフットサル場で別れ、一と麻海は麻海の家に向かって歩いていた。
「なんか遊びすぎちゃったね…。」
麻海はセーラー服の襟をパタパタさせる。
「フットサル楽しいね。」
一も最初はブレザーの上着を着ていたが、今やすでに上着もネクタイもなく、カッターシャツのみだった。
「でしょ?!よかった、楽しんでもらえて。」
麻海は一の意見に心から喜んでいた。
「麻海はああいう世界にいるんだなって思った。」
ふいに一のトーンが下がる。
「うん!でもね、私こういうのも好き。ゆっくりした時間て大切だと思うの。それに、一がいたからあんなにオープンで人と接せるんだよ?」
麻海は笑顔を向ける。
焦りは感じない。
「ごめん、そうじゃないんだ。うん…すごいなって、ちょっと尊敬。」
「尊敬?!私のが尊敬いっぱいだよ!!勉強でしょ、大人っぽさでしょ、勉強でしょ、勉強でしょ…」
「クス…勉強しかないじゃん…」
一は声を殺して笑う。
「でも、私は一の尊敬には値しないっていうか、おかしいっていうか…」
「わかった。でもありがとう。俺初めて人とあんなに喋れた気がする。」
「それは一が頑張ったからだよ。じゃあまた明日電話するね!送ってくれてありがとう。おやすみなさい。」
楽しい時間は早いもので、気付けばすでに場所は麻海のうちの前だった。
「今日は楽しかった、ありがとう。おやすみ。」
二人は去り際、チュッと触れるだけのキスをする。
言葉はいらない。
麻海はニコッと微笑むと家に入り、一は麻海のただいまという声を聞きながら家へ向かって歩きはじめる。
そして、夜空いっぱいに輝く星空を見上げた。
俺達はまだ何も出来ないただの子供だけど、何も出来ないなんて思わない。
だから、一緒に歩こう。
君がくじけた時は今度は俺が引っ張る。
誰にも負けない力と、勇気を手に入れたから。
君に会えてよかった。
ありがとう、そしてこれからもよろしくね。
小さな俺の女神様…
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