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 街は、 賑やかな音楽や人々の笑い声で溢れていた。 頭に三角のとんがり帽子を被り、 赤い顔をした中年の男たち。 幸せそうに肩を寄せ合い、 派手なイルミネーションで飾られた建物へと入っていく 知り合ったばかりのカップル。 繁華街の裏路地では、 泥酔した若者がいがみ合ったり、 街を汚したりしているのが見える。 「いい気なもんだのう……」  老人は、豊かに蓄えられた 真っ白な顎鬚をさすりながら呟いた。 「お前たちのご先祖様を創り出した、 偉大な神の御子の誕生日だというのに、 それを祝福する者はほんの一握りしかおらん」
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