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 ふと足元を見ると、 傷ついた小鳥が 苦しそうに鳴いているのが見えた。 翼の付け根から血を流し、 かすれた声で助けを求めている。 老人は小鳥を抱き上げると、 右手で毛並みを整えるように、 優しく愛撫した。 二度、三度と繰り返すうち、 出血が止まり、傷は癒え、 みるみる血色もよくなっていった。  小鳥は身を起こし、 老人の大きな掌にちょこんと座ると、 傷ついていた方の翼を広げてみた。 老人は深い笑みを小鳥に向けながら、 小さく頷いた。 小鳥は老人に何事か囀ると、 勢いよく飛び立っていった。 老人は小鳥に手を振って見送った。
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