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何気なく言った晶也さんの一言がひっかかった。そこから先4人で何を話したか、何を食べて何を飲んでどうやってお開きにしたか、ほとんど記憶がなかった。別に酔っていたわけではない。普段あまり酒が強くないほうだけど、あの時は飲めば飲むほど気持ちは冴え冴えとして、嫌な思いばかりが頭をよぎった。
「真之介、今日はありがとな。疲れた?」
黙々と後片付けを行い、洗い物をしている俺に広喜さんがそう声をかけてきた。
「いいえ、別に」
「やっぱ、疲れてんじゃん。そんなにそっけなくして……片付けは明日にして今日はもう休もう」
それでも俺は広喜さんの方を見ることができない。広喜さんだって何か思うところがあるから、いつもみたいに触れてこないんじゃないの……?だから、さっきからずっと頭の中をめぐっている疑問を口にした。
「ここに来たことあるんですか?」
訝しげな表情をした広喜さんの片眉が上がった。そんな仕草でさえ、広喜さんがするとキレイで色っぽい。でもいまはそれどころではない。
「晶也さん。以前ここに来たことがあるんですか?」
「んっ?ああ、あるね。一度だけ」
「それはいつ……何しに来たんですか?」
それに対する広喜さんの答えを聞いて、俺は部屋を出たのだった。
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