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まだ真之介を好きになる前、話の流れで体だけの関係ならつきあってもいいと言ったことがある。でもあいつはそれを断った。そんなふうに拒絶されたことがなくて、その出来事は結構堪えた。「先輩の心が欲しい。体だけなんていらない」真之介はそう言った。逆のことなら何度も言われたことがあるし、何度もそれに応じてきた。
人に心を奪われるなんて未知の領域で恐ろしい。心を差し出すなんて、考えられない、そう思ってたのに。
真之介に出会ってその決心はあっさりと鈍ってしまった。随分と年下なのに妙に落ち着いた物腰や、いつも自分を気にかけてくれるところ。何より好きになるきっかけだった声。真之介の声は、俺の脳幹や心臓みたいな体の深いところに届く。
それに聞き惚れて惚けたようにして真之介をみていると、必ずキスをしてくれる。その度本当に、とろけそうになる。
声とキスで俺をとろけさせる、その唇が次に何を言い出すのかじっとみつめていた。
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