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「あーあ、弟さんも不憫だね。ド天然な兄貴を持つと」
「そうなんすよね。だってこれで蒼まで彼女じゃなくて彼氏を連れてきたら水沼家は途絶えますよって言ってるのと同じですから。まあ、俺はその辺わりとどうでもいい人なんだけど、蒼は母親に随分可愛がられてたから言い出しにくいだろうな。ま、先に言ったモン勝ちですよね?」
「響さんて、結構怖い性格してますよね……ちなみに弟さんて顔似てますか?」
「真之介くんも、意外と毒吐くよねぇ……顔はね、自分ではよくわかんないけどそっくりらしいよ。よく「双子ですか?」って聞かれるから」
「もしかしてちょっと酒癖とか、悪かったりします……?」
「あっ、すっごい悪いよ!あいつ」
「だったら、弟さん、よく胡桃に来てるかもしれません。いつもすっごい格好いい人と一緒ではじめ響さんが浮気してるのかと思いました。でもよく聞くと声とか、しゃべり方とか服装も違うので、別人だってわかりましたけど」
「あー、それ俺も胡桃に行ってた頃に見たかも、弟さん」
「そっかあ、胡桃って荻○にあるんだもんな。そう言われるといろいろ話が繋がるわ。そうか、世間て結構狭いな」
「で、何?結婚宣言って。すごい気になるんだけど」
広喜さん、ナイスつっこみです。俺もすごい気になります。
「あ、それはね……」
言い出そうとした響さんを晶也さんが遮る。
「その話はもうやめような、響」
「……先輩ってその時のこと思い出すと今でも本気で照れるんですよ。ごめんなさい、そんなわけで話せないんですけどね……」
「なんだ、つまんないな……今度晶也さんがいないときに聞かせてね。あっ、そうそう、俺たち近々ここ引っ越そうと思ってるんですよ。店は変わりませんけどね」
広喜さんが晶也さんと響さんに告げた。
ストーカーに部屋に踏み込まれたあの事件があってから、俺たちふたりで話し合ってそう決めていた。広喜さんは絶対ないと言い張るけど、また同じようなことがないとは言い切れない。やはり職場の上が住まいであるというのはそういうときに物騒だという(主に俺の)意見で、近くに部屋を探すことになったのだ。もちろんふたりで暮らす為の部屋である。
「そうだな。いろいろあったし、そのほうがいいと思う。それに前に来たときより随分物が増えてるし、真之介とふたりだとやっぱり手狭になっちゃうんじゃない?」
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