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その日、『理彩、今日うちに泊まりに来い』という言葉通り、蕾斗さんのアパートに泊まりに行った。
「結局何だったんだよ?」
そしてアパートに入るなり言われた言葉。
何のことかわからず、首を傾げる。
「理彩が泣いていた理由とか、アツシが謝ったかどうかとか、……挙げ句の果てには、理彩のことを大切にするかだとか……」
「……」
今の蕾斗さんには、たぶん、ううん、絶対に“何でもない”は通用しない。
「理彩?」
なんて言えばいい?
こんな空気になりそうな予感がしていたから、その前に美波と一樹さんが付き合うことになった話でもして、ごまかそうと思っていたのに。
もし今その話をしても、きっとまたすぐに戻される。
「言わねぇつもり?」
「……」
「理彩」
きっとここではぐらかしても、また同じことを訊かれたりするんだよね。
だったら、もういいや、言っちゃえ!
「蕾斗さんが、遊んでいたときの話」
言葉にした瞬間、『遊ばれてんじゃないの?』という篤史くんの言葉が脳裏によみがえってきて、目から涙がこぼれ落ちた。
だから言いたくなかったのに。
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