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「俺の、こと?」
目の前にいる蕾斗さんの眉間に皺が寄る。
……胸が、痛い。
蕾斗さんの過去をすべて知って、それでもいいって付き合い始めたはずなのに。
やっぱり、その過去のことを思い出すと苦しくなる。
ここから逃げ出したくなる。
「話してくれねぇか? 理彩のその涙のわけを」
昼間、食堂で繰り広げられた会話を思い出しながら口を開いた。
「蕾斗さんとのことを、篤史くんに『遊ばれてんじゃねぇの?』って言われたときに泣いちゃって、そのことで篤史くんが『傷つけるつもりはなかった』って謝ってくれた。美波はあたしを心配してくれて、蕾斗さんにあんなことを言ったんだと思う」
そう話しながら、自分の中の弱い部分がじわりじわりと顔を出してくる。
……自信がない。
蕾斗さんの彼女でいる、自信がない。
「俺の、せいか。……理彩の涙は」
眉を下げながらそう言う蕾斗さんを前にしていると、過去のことや嫌がらせのことを思い出す。
このまますべてを放り出して空っぽにしたくなってくる。
「蕾斗さん、今日は……帰りたい」
つい、ぽろりと本音がこぼれた。
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