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雨がふる都内。まだまだ、この列車は走っている。過ぎ行く日々に亀裂を走らせて。
「UJ21、ぼくは君に走らせたペン分のデーターバックを求めるよ」
『ソレデハ、カイセキヲカイシシマス』
筆圧を遠赤外線で照らしてでたのは、ぼくも知らない物語だった。
UJ21、それが故障したこのロボットの後始末だ。
「ぼくを忘れてよ」
『カイセキヲカイシシマス』
UJ21の型番はもうふるくても、ぼくのとびきりのストーリーは、このロボットから始まる。
まるくなって。
列車と一体になったUJ21はもうすぐ機械化したひとになるのだろうか。
ぼくはそれを楽しみにしていたのに、母さんも父さんも、UJ21をひきとる財産がない。
『カイセキカンリョウシマシタ』
列車のままのUJ21は、管理会社のずさんな施工に四苦八苦しただろう。
かわいそう。
かわいそうで泣きそう。
「ねえ、想い出、かたってよ」
『リョウカイシマシタ』
かたかた
「日常って、わすれるものだね。想い出も、すりきれる」
かたかた
かたかた
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