東京東横線列車発車

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(UJ21の音声と録画画面が現れる) ◇◇◇  小麦色の帽子が飛ばされないよう、しっかりと掴んで、ひまわり畑をはしっている。ぼくの恋人は、そのひまわりを持って、ニタニタわらっている。 「なに?なんでワラウの?」 「いいや、べつに」  彼のいやみったらしい声音が耳に貼りついてとれない。ぼくはまだおんなのこだ。彼のたくらみにまんまと落とされた。  白いワンピースがそよそよと風になぶられ、そのまま裾をさらってゆく。 「ねえ、なんでぼくを」 「ああ、お前なら、なんでも」  ぼくの声はとどいているだろうか。それを確かめるために小麦色の帽子をなげた。   ふわ 「あ、キレイ」 「え、なんで」  ぼくの聞き方が悪いのか、彼はそのまま目をしぱしぱしている。 「拾ってやるよ」 「え」  ふわり ◇◇◇  列車の窓は真っ暗闇。  UJ21は言った。音声認識ソフトは高機能だ。 『コレガアナタノハジメテノシツレンデス』 「え?」  意味不明なこたえを、なぜロボットは発するのだろう。ぼくの失恋は、小学3年生のときの告白のまま、止まっていたのに。
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