6人が本棚に入れています
本棚に追加
(UJ21の音声と録画画面が現れる)
◇◇◇
小麦色の帽子が飛ばされないよう、しっかりと掴んで、ひまわり畑をはしっている。ぼくの恋人は、そのひまわりを持って、ニタニタわらっている。
「なに?なんでワラウの?」
「いいや、べつに」
彼のいやみったらしい声音が耳に貼りついてとれない。ぼくはまだおんなのこだ。彼のたくらみにまんまと落とされた。
白いワンピースがそよそよと風になぶられ、そのまま裾をさらってゆく。
「ねえ、なんでぼくを」
「ああ、お前なら、なんでも」
ぼくの声はとどいているだろうか。それを確かめるために小麦色の帽子をなげた。
ふわ
「あ、キレイ」
「え、なんで」
ぼくの聞き方が悪いのか、彼はそのまま目をしぱしぱしている。
「拾ってやるよ」
「え」
ふわり
◇◇◇
列車の窓は真っ暗闇。
UJ21は言った。音声認識ソフトは高機能だ。
『コレガアナタノハジメテノシツレンデス』
「え?」
意味不明なこたえを、なぜロボットは発するのだろう。ぼくの失恋は、小学3年生のときの告白のまま、止まっていたのに。
最初のコメントを投稿しよう!