1 やってきましたヒーローフェス

4/4
前へ
/36ページ
次へ
「ひぃ・・・・・・ひどい目にあったよ」  里倉は頭にこさえたたんこぶを擦りながら、服の埃を払う。 「ああ・・・・・・そういえばその格好、こないだの『ジャン拳戦隊チョキレンジャー』に出てきた怪人にそっくりだ・・・・・・」  本当なら笑い出したいところを、拓未は彼に同情して必死にこらえた。 どうやら里倉は、テレビの戦隊ものの怪人と間違われて襲われたらしい。 ヒーローや悪の組織の存在を本気で信じる子供の純心は、時として恐ろしい凶器となるのだと、里倉は身をもって思い知らされた。 「まさか自分が倒される側になるとは思わなかったよ。 『マニアン』なんて、名前まで似ててやな感じ」  里倉はさも不服と言った感じで独り愚痴る。 「本当だったら、これほどこの場所に似合う人もいないんだけどね・・・・・・」  拓未は里倉の容貌がよほど場に合っているだけに皮肉を感じた。  もちろん里倉には、自身の格好が一般の人々のそれと何が違うのか、理解できていない。 「?」  きょとんとしている里倉を尻目に、拓未はすっくと立ち上がると、元気に言い放った。 「よし!次はいよいよ、今日一番の目当てだった『仮面ファイター歴戦の戦士達』コーナー行くぞお!!」  拓未の眼の輝きが2倍になった。  拓未の積極性がぐんと上がった。 (ま・・・・・・まだあるんだ・・・・・・)  里倉は愕然とした。  里倉はトラウマを身に着けた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加