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拓未はなんだか、急に恥ずかしくなった。
こんな小さな子がすぐそこにいたのに、それに気付かないほど夢中していたのだ。
「ああ、ゴメンゴメン!先に押してください」
どうぞどうぞのポーズをとって拓未が促すと、子供は2、3歩前へ出て、おそるおそるスイッチに触れた。
瞬間、鈍い音のブザーが鳴り、像の口からガスが吹き出る。
「おわぁっ!!?」
二人は驚いて大袈裟に尻餅をつく。
拓未は本気で驚いてのことだったが、子供のほうはむしろ、そのときの拓未の大声に驚いていたように見えた。
「たくみちゃん、大丈夫!?」
声を聞きつけた子供の保護者らしい女性が、すぐさまやって来た。
だが、その柔らかな高音は拓未にも聞き覚えがあった。
「・・・・・・てて・・・・・・って、美咲さん!!?」
驚きのあまり、拓未は尻餅をついたままの状態で身を乗り出す。
そこにいたのは間違いなく、拓未の片想いの相手であり、おそらくクラスで唯一彼のオタク趣味に気付いていない鈍感少女・美咲さくらであった。
「あっ、尾沢君?」
さくらのほうも、拓未の顔を見て目を丸くする。
「その・・・・・・どうしたの?こんなところで」
拓未は内心かなり混乱しながらも、とりあえず一番無難な質問をしてみる。
「きょうはこの子のお守りを頼まれて、一緒に来てみたの」
さくらはそう言って子供を抱き起こすと、その頭の上にちょんと優しく手を乗せた。
「へえ、そうなんだ~。・・・・・・その子、弟?」
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