入学式

5/8
前へ
/16ページ
次へ
講堂へ入ると開会まで20分以上あるにも関わらず、すでに席の半分ほどが埋まっていた 特に席順が決まっているわけでもないので、どこへ座ろうと構わないのだが 前や後ろに行き過ぎると目立つため、中央よりやや前方の空いている席に座る 当然のことだがクッションは効いておらず、座り心地はよくなかった こういった場所での端末使用はマナー違反なうえ、通信制限が掛けられている そのため書籍サイトへアクセスすることもできず手持無沙汰になってしまった 講堂へ入るときに渡された、この学校の生徒であることを示すIDカードを見てみるが 入学式が終わったら窓口へ行き認証手続きするように言われたため、 予め個人データが入力されているものではないようだ 「あの、お隣空いてますか?」 声のした方へ顔を向けると3人の少女がこっちを見ていた どうやら、オレに訊いているいるようだ。どうせ、断るような理由もない 無愛想にならないように笑顔で返答すべきだろう 「ええ、どうぞ」 コニリ 自分でやっておいてアレだが、男にやられたらと思うと鳥肌が立つ。正直、キモい オレの心の裡など気にせず、彼女たちは横へ順に座っていく さて、こんな風に女の子同士で集まればガールズトークになるのだろうが 今のオレにそれをこなすだけのスキルがあるのか非常に不安だ 「あの………」 できるだけ、表情を悟られないようポーカーフェイスで正面を見ていると ダークブラウンの髪をポニーテールにした少女が声をかけてきた 間違いなく初対面であるし、肩や足が当たっているわけでもない まさか、オレを男だと見抜いたのか?そんな風に訝しんでいると… 「私、小西 紫(こにし ゆかり)と言います。よろしくお願いしますね」 ニコッ どうやら、単なる自己紹介らしい 気付かれないように、胸を撫で下ろしていると 「あ、アタシは鬼束 煉華(おにづか れんか)。よろしくね~」 そして、もうひとりの少女も自己紹介を終え、オレが自己紹介するターンのようだ 「九条院 要です。よろしくお願いします」 少し迷ってから「苗字では長いので、名前で呼んでください」と言うと 3人とも名前で呼んでということになった ここまで来たら不自然でない程度にコミュニケーションを取っておいた方がいいかもしれない さし当たってどんな話題がいいだろうか…
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加