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これからもっと、別のレッスンも薫にしようか…そう僕が直々に教えよう!バージンから一歩進んだ薫が、飲みこみの早い熱心な生徒ならいいけどな…
薫に加わった新しい仕事は、一緒にいることを楽しみ、僕の援けを借りて幸せになることだ。
長野が灯した和ろうそくの炎は、揺らめきながらオレンジ色に染まり、やがて静かに消えていく…
現在は薫の上司・杉原と、河野美優の上司・上川、それに今回の企画を僕に依頼してくれた彼らの同期生・香川が、進めるもう一つの企画と、長野と薫は競っている…
しかし長野の想いは、今回だけは勝ちを彼らに譲ってもいいのではないか?と 、薫と肌を重ねてから、より強く思うようになっていた。
安易に負けるわけではないのだ!その間に力を蓄えながら準備を整え、今度は逆に次の企画を、彼らに僕から提案してみるのも、面白いかもしれない…
今回【勝ちを譲る】ならば、今まで積み上げて来たもののうち幾つかが、無駄になる。そしてただ選択肢は2つ、薫か、企画成功を取るかだ。
どちらも手に入れられると、自分を甘やかすことはできない…
巧みに誘惑され…そう意図を持って彼女に近づいた僕に利用されて、裏切られたと気づいたら、薫は僕を、決して許してはくれないだろう!
しかし裏切らなければ、彼女はこの僕を受け入れてくれるのだろうか?
初夏の水滴に洗われた陽光が、離れの高窓から差し込む中、部屋に戻った長野は、薫を抱き締める。
部屋に置いてある和紙のテーブルライトも消して、薫をただ抱き締めていたのだ…
この時ほど、この離れの良さを、改めて感じたことはなかった…
これからは、こんな穏やかな瞬間(とき)は、もう二度と訪れることはないだろうな…と。
彼女は眼を閉じている…豊かな膨らみに彼の指がそっと触れた瞬間(とき)、甘い吐息を漏らす…
その反射的な仕草が、自分の指でなぞった反応だと気づいた長野は、また自分の体が熱くなってくるのを感じる。
こんなふうに彼に反応を起こさせるのは、薫一人しかいなかった。
薫のまぶたが震えた…彼女は目を開け、うっとりした表情で長野を見上げた。
「あなたをもっと愛してしまったみたい…今夜はっきりわかったの…」
その言葉を聞いて長野の体は、また痛いほど薫を求めて強張っていく。
薫は目をパチパチさせる。「わたし、声に出していたの?博さん…」
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