シルエット・ロマンス・・・(Ⅱ)

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滑らかな白い肌に残した僕だけの印…初めてこの腕の中で、乱れる様(さま)をいつまでも見ていたいと募らせた相手…薫。 長野はこれから訪れる薫とのめくるめく時間が、待ち遠しかった。 枕の上に拡がる黒髪に、包まれた愛らしい薫の顔を、見つめながらこの日をようやく迎えた喜びに包まれていく… ほんの一瞬探って、最初のピークが雷のように薫を貫いた。 彼を体の奥深くに感じて、悶えるような狂おしい快感が、全身に走っていく。 薫が長野を包みこんだまま、小刻みに身を震わせると、彼のうめき声が聞こえる… 長野は狂おしいほどゆっくり身を引くと、それからさらに深く沈めた。 甘い苦悩が押し寄せて来て、さらに高く昇っていく… 息ができなくなるまで…これ以上は耐えられないというところまで…このままだと壊れてしまうと思うまで。 薫はすすり泣きながら、自分から、彼を求めるようになっていた。 長野は、薫の汗ばんだ肌にゆっくりと指を滑らせる…薫はその動きに導かれるように、全身を弓のようにしならせる… 「薫…」彼が呼ぶ自分の名前が、遠くに聞こえた…彼の指がハミングを奏でるようにして薫の肌を弾く。 彼が自らの大きさと重みで満たしていくと、薫は心許ない声を上げてシーツを掴み、身を捩った。 珊瑚色の唇をきつく噛み締める。彼の名前を口走らないように…やめてと哀願しないように…わたしを愛して捨てないでと縋らないように… 薫はそっと眼を開けて、長野の引き締まった体を見た。和ろうそくの炎に照らされて、汗の光る筋肉を… 彼は眼を閉じていた…体を引くその顔には、切ない表情が浮かんでいる…再び深く腰を沈めてくる整った顔は、張りつめていた。 博さん…わたしのプリンス…わたしのベットの相手…わたしの愛しい男性(ひと)? 薫の心の声が聞こえたかのように、長野が眼を開けた。 視線が絡み合い、彼の唇と指が薫の肌に、初めての印をさらにいくつも刻んでいく… 低い呻き声をあげ、長野が最後の一突きで奥深く入ると、薫を無数の星のかけらに打ち砕いた。 まるで魂まで貫かれたように世界が砕け散り、長野と深くしっかりと結ばれながら、薫は彼を包みこんでいた。 彼のたくましい体に、身を裂かれそうだと感じるまで… それからしだいに押し寄せて来る興奮に、体を弓なりにして昇りつめて、遠くから彼の名前を呼ぶ自分の声が聞こえた。
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