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「薫の言うことも解らないわけではないけど…」そう言いながら、長野は薫をもう一度抱き寄せる。
「加えてここで気を緩めてしまうと、V6の他のメンバーのみなさんに、要らぬ心配をかけてしまうかもしれない…」
「それに、あなたのデビュー当時からのファンの心もざわめくわ!わたしがあなたのファンだったように、あなたをここまで支えてくれた大切な存在よ…」
「吉事門を出でず(きちじもんをいでず)だと思うの。ファンあっての博さんでしょ?今はイメージを保つことを考えて…わたしのことはその後でいいの…」
薫は長野の腕の中で、笑顔を作ろうとする。薫の背中を撫でていた長野の手が、止まる…
「君はそれでいいの?」「ええ、いいわ…」薫はこみあげてくる想いを隠したくて、唇を舌で湿らせた。
「そうしたら、あなたはいつでもわたしと別れられるのよ…この関係をなかったことにもできるはず…」
一瞬、長野は息ができなかった。信じられない…薫から別れを切り出すなんて…
薫にとって、僕はまだ手の届かない存在なのか?
この企画を自分に有利に進めるために、彼女を誘惑したことが、裏目に出てしまったのか?
長野は、腕にいる薫の重みを確かめたくて、彼女の顎に指をかける…
「薫、僕だけが空回りしていたのかな?君のすべてが欲しくて焦ってしまったようだね…」
薫は何も答えなかった…言わないかわりに、彼の唇に自分から口づけた。
「これがわたしの答えよ…博さん!だから負担をかけないようにしなきゃ…といつも思っているの…」
「あなたが恋しいからこそ、失うのが怖いのよ…」薫は涙をこぼさないようにと、僕の腕から抜けると、シーツを体に巻き付けた。
”僕を失うことになる”…、もちろんそんな言葉には耳を貸さなかった。
そのかわり、続き間にシーツを残して、先ほどまでいた部屋に戻った薫が着替えようとしているのを、背中から抱き締める…
「…っ!」「…んっ!…」「博…さん‥」
舌足らずに聞こえるその声を、まだ聞いていたくて、もっと彼女を引き寄せて、黒髪を弄んでみる…
珊瑚色の唇にキスを落とし…ひどく儚げに…若く見える彼女を、情熱に駆られて後先も考えず抱いた…
そしてこの美しい女性(ひと)が、26歳で未だにバージンだったことを知った。
今でも…いつでも満ち足りているはずのこの瞬間でさえ、彼女を初めて抱いたことが蘇り、下腹部が硬くなってくる…
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