回想  夏の記憶 Ⅲ

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 夏休みが始まった。 今日もバスケ部の朝練が始まる。 だが、早朝なのはラッキーだ。 昼の時間帯だと、少し動くだけで汗が出て止まらない。 「今日も暑くなりそうだなぁ。」 海斗は青い空を見上げた。 うるさく鳴く蝉の声に、頭までやられそうだ。 「野郎ども、始めるぞ。」 北山の大きな声が体育館に響いた。 ストレッチの後、フットワークやコートを使用したダッシュで汗をかく。 体が動くようになると、次はパス練習だ。 海斗と蓮はいつものように、二人で組んで練習を始める。 中学から始めて、もう、どのくらい二人でパスを出し合ったか分からない程だ。 ボールは何度も何度も二人の間を行き来した。それが当たり前であるように。 ツーメンランニングやフォーメンランニングの練習を終えると北山は休憩を取った。 「15分の休憩だ。水分補給、忘れんなよ。」 「ウス」 皆、びっしょりと汗をかいていた。 「あちぃ~。」 東と真田は着ていたシャツを脱いで、タオルで拭いている。 「海斗、顔を洗いに行こうぜ。」 「そうだな。」 海斗と蓮は、外にある水道へ向かった。 6つ蛇口が備えられた水道の水は、最初は生ぬるかったが、徐々に冷たくなっていった。 二人して、バシャバシャと洗う。 校庭では野球部が朝練を始めていて、カキーンとバットで球を打つ音が等間隔で聞こえてきた。 「頑張ってるねぇ。」 「あぁ、うん。明日、試合があるらしいよ。立花が言ってた。」 蓮が、ん?という顔をした。 「立花?」 「あぁ、同じクラスのやつだよ。」 海斗は、フーと言いながらタオルで顔を拭いている。 「・・・」 蓮は蛇口を海斗へ向けると、手を当てて思っいきり水栓を回した。
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