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朝の体育館は、外気と変わらぬ気温のままだった。ブルリと体が寒さで震えた。
「チース!」
後輩の1年達が海斗に挨拶をした。
「おは。もう来てたんだ。」
1年生達は、ボールを運び朝練の準備をしている。
「他のメンバーは?」
海斗は、体育館に2年がいないのを見て、近くにいた1年生に聞いた。
「北山キャプテンと東さんと真田さんは部室です!」
朝から見せる爽やかな笑顔が眩しいなぁと思いながら、海斗もニッコリ笑って答えた。
「そっか。じゃ、俺も部室行ってくるわ。」
海斗が部室へ入ると、北山と東はジャージに着替え、ホットコーヒーを飲んでいた。
「おはよ。」
「海斗、おはー!あー。やっぱ苦ぇな、コーヒーは!」
海斗は、北山が持っている黒い缶を見ながら言った。
「ブラックなんて、選んだからじゃん?」
「押し間違えたんだよ!でもちょっと目が覚めた気がするわ。」
二人は、人気アイドルがCMをしている缶コーヒーから、応募用のシールを剥がしていた。
「きたやん、何枚たまった?」
「8枚。あー。まだ12枚集めないと応募できねぇーんだよな。東は?」
「俺は、兄貴に手伝ってもらってるから後4枚だな。」
真田は、苦笑しながら、二人の方を見て言った。
「何が貰えんの?」
真田は、彼らより後に来たのか、バックからジャージを取り出している最中だった。
「特製ユイちゃんの抱き枕!萌えるっ!ぜってぇ欲しい!!」
「でも、抽選で100名なんだよなぁ。あとは、スポーツタオルとか、缶バッチ?」
「どっちも抽選で300名だけど!」
海斗は密かに、どれもこいつらには無理だろうなと思った。
人気絶頂のあのアイドルに釣られ、いったいどのくらい応募されるのか想像すら出来ない。
抽選で100名など砂漠に落とした針を拾うようなものだ。
せめて、缶バッチは1000名にしてやれ。
北山と東はコーヒーを飲み終わると、
「じゃぁ、ぼちぼちやるかー。先、行っとく。」と部室を出て行った。
制服を脱ぎインナーのシャツに着替えながら真田が海斗に声を掛けた。
「海斗、今日は放課後に進路指導あるだろ。お前、3年で何取るか決めたか?」
海斗の通う普通科の高校では、3年で理系と文系に分かれて科目を取る。
「んー。まだ・・・。」
「だよなぁ。理系とか文系って言われてもピンとこねーし。」
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