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真田は最後にジャージを羽織り、バッシュに手を掛けて、ふと思い出したように言った。
「蓮は、今頃何してるんだろうなぁ。・・・ふっ。あいつ、英語出来るようになったのかな?」
蓮と聞いて、海斗の指先がぴくっと動いた。
“蓮・・・。”
すこし俯く自分が嫌になる。
そんな海斗に気づかず真田は続ける。
「英語なんてまともに出来ねぇくせして、高校2年で留学という選択肢を選んだあいつは、やっぱちょっと変わってるわ。ははは」
そう言いながらも、真田は蓮の事をこれっぽっちも悪く思ってない。
どこか懐かしそうな顔をして、蓮が使っていたロッカーを見守るような目で微笑んでいる。
「やっぱさー。」
真田の顔が急に真面目になって言った。
「金髪のセクシー系とかと、出来てたりするのかな・・・」
「・・・。」
一瞬の沈黙の後、
「知らね。」
海斗は、答えると黙々とジャージに着替えた。
シューテイングガードの蓮、ポイントガードには海斗。
彼らは夏のインターハイの県予選ではベスト8まで行けた。
だが蓮や3年の先輩が抜けた後の冬の県新人戦は2回戦で敗退し、チームは一から鍛え直す為、基礎を重点においた練習が組まれた。
海斗と蓮は中学時代から一緒にプレーしていて言わばボール運びからパス、シュートまでの流れは阿吽の呼吸だった。
だが蓮の後任の真田とは、まだしっくりくるプレーが出来ていない。
“チームとしてのプレーは練習あるのみだな。”
海斗はインターハイとはがらりと入れ替わったメンバーを見ながら思った。
朝練が終わる頃には、皆ぐったりとなり、汗をかいていた。
授業が始まると、先日行われた期末テストの結果がかえってきた。
海斗は、そこそこどれも平均点だった。
「進路選択かぁ・・・。」
理系文系得意な方があれば、それを選択するつもりだったが、こうも自分に光る物が無いと決めにくい。
海斗は、窓際の席で青く晴れた空を見上げた。
将来何になりたいかなんて解らない。
特にないし、大人になれば皆、会社に勤めてサラリーマンをするんじゃないかと思っている。
そりゃ、俺が宇宙飛行士になりたいと願ってるなら、今からでは間に合わないくらい沢山の準備が必要で、すべき勉強等も理系文系、それに英語力も欲しいと思うかも知れない。
つまり、でかい夢には、でかい作業が伴うって事だ。
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