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“夜の博物館かぁ。”
ちょっと行ってみたい気もする。
ダメでもともとと行ってみると、入口には守衛がいた。彼と鷹野は面識があるので、
「ごめん。大事なレポート忘れ物てた~~。」
と言い館内に通して貰った。
館内は、まだ温もりが冷めておらず外より暖かい。
シーンと静まり返り昼間の喧騒が嘘のようだ。
音もなく光るクリスマスツリーは、世界を幻想的なものに変えていた。
下からのライトで照らされた恐竜たちの骨の標本の影が、壁や天井に映し出され今にも歩きだしそうだ。
海斗は、こっちこっちと手招きされ2階の憩いスペースに連れてこられた。
全面ガラス張りでここからは博物館の庭が見える。
庭が見えるソファへと招かれ座った。
「わぁ・・・!!!」
思わず、感嘆のため息が出る。
昼間は芝とソテツとサンタや天使の飾りしか見えない。
だが今は、芝に埋め込まれた無数の灯りが星のように煌き、サンタや天使はネオンが付いてかわいく輝いている。
「いいでしょ~・・・」
ふぁぁとまたもあくびをしながら言う鷹野は、優しげな顔でソファに身を委ねている。
「・・・。これ、見せる為に、ここに連れてきたんですか?」
「ふぅぅ・・・。どう・・かなぁ~。君が、元気ないから・・・。」
「元気なら、ありますよ。」
「ふぅ~ん」
「・・・。さっきの。」
「うん?」
「さっきの、一度や二度失恋したくらいでってやつ。」
「うん?」
「酷くないです?」
「なんで?」
「一度でも本気の恋なら、それがすべてなんじゃないでしょうか?
・・・代替えの恋なんて、効かないし・・・いらない。」
「ふぅ~ん。」
そう言いながら、鷹野は海斗をぼんやりと見つめている。伝わっているのだろうか?
“ふぅ~んって、この酔っ払いめ!”
「じゃぁさ。その代替えも効かない恋って、どんなの?」
「えっ?」
「ふぁぁ。夜語りに、何があったか、聞かせてよ。ーーー・・・。」
トロンとした顔で言う。
どうせ、酔ってるし、きっとこんな話、聞いても覚えてないよな・・・。
鷹野を見ると目を閉じていた。寝たのかな?
鷹野の整った顔は、今は光の加減で美しくさえ見える。
海斗は横顔をじっと見ながら言った。
「“人が人の事を愛するっていうのは”、鷹野さん、男同士・・・も含まれるんですかね?」
鷹野の目は閉じられたままだ。
はぁと溜息をつくと、海斗は庭へ視線を戻した。
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