回想  夏の記憶 Ⅲ

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真っ赤になって、うろたえる海斗に蓮は、 「大丈夫。気持ちいいこと、するだけだから。」 そういうと自分も服を脱いだ。 「れっ・・・蓮!!んんっ・・」 蓮の手解きに海斗は震え、身を任せることしか出来ずにいる。 体を駆け抜けていく甘い刺激が次を次をと求めてしまう。 蓮の動きを止めようと思った手は、代わりに肩を掴んだ。 「海斗っ・・大丈夫・・・」 優しく微笑んだ蓮は、海斗に口づけた。 「あぁっ・・・」 海斗は短く声を漏らすと全身を震わせた。 肩で息をしながら白濁した頭でぼんやりと思った。 “・・・もしかして、今日は最後までいってしまうのかな・・・” 不安のような期待のような感情が湧き上がる。 “怖い気持ちもあるけど、蓮となら・・・” 好き過ぎて狂いそうだ。 お互いが夢中になっていた。 その時だった。 突然、蓮の部屋の扉が開いた。 「ただいま。蓮、今帰ってきーーーーーー」 扉を開けた女性は目に飛び込んできた情景に叫び声を上げた。 「きゃぁーーーーーーー!!!!」 二人はハッとして扉の方を見た。 「お・・・おかぁさん・・・」 その人は海斗が今まで、一度も会った事がない蓮の母親だった。 彼女は、勢いよくバタンと扉を締め、入ろうとした部屋から出た。。 「はっ、はっ、早くっ服を着て!」 扉越しに怒鳴るように言う。 そしてそのまま、扉の前にしゃがみこんだ。 “えぇ!なに?どういう事なの!?” 彼女は、自分の見たものが信じられなくて、頭が働かない。 体中の血が逆流して、思考を妨げているようだ。 “落ち着いて・・・落ち着いて・・・ そうだ。何故こうなったのか・・・。 事故かもしれないし・・・事故? いや、やっぱり違う・・・ あぁ、旦那に相談しなくては。” こんなに繊細な問題は、自分一人で解決するには荷が重すぎた。
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